ソフトウェアを扱うあるベンチャー企業は、消費者にとって分かりやすく、レガシーシステムを持つ保険会社でも簡単に導入できる形で保険会社と消費者を直接つなげるソフトを開発し、そこに勝算を見出しました。保険会社が直接販売の方向を模索し始めていた時期だったので、この製品は適切なタイミングで市場に登場したと言えます。このソフトの強みは、様々な事業管理システムとの統合のしやすさでした。しかし、製品の魅力は明らかだったにもかかわらず、ベータテストに同意するアメリカの保険会社は1社も現れませんでした。
我々の調査では、この製品に明らかな欠陥はなく、クライアントの売り出しのタイミングは実質完璧でした。また、他社の競合製品や社内開発といった脅威により、クライアント基盤を固めるための時間枠が限られていることも明らかでした。
さらに、保険代理店などの流通仲介業者を排除するという考えに基づくバリュープロポジションは、保険会社の経営において良い刺激となる以上に緊張感をつくり出していることがわかりました。直接販売が将来的には主になってくることは誰にとっても明らかでしたが、保険市場の確立されたプレーヤーのほとんどは、徐々に保険ブランドに不可欠となってきた代理業者を疎外する用意ができていませんでした。この状況では、一般的・全面的なアプローチではなく、見込み顧客ごとの個別かつ繊細な戦略が必要でした。
Incupointは、既存のバリュープロポジションとそれを中心に構築されたすべてのマーケティング材料を完全放棄することを提案しました。クライアントが特に緊密な関係のある保険会社を数社選んだ後、直接の保険販売戦略に基づく新たな製品配置戦略を立て、既存の販売モデルと直接競合するのではなく強化する策を取りました。重要なのは、保険代理店と協力することでプロジェクトの利害関係者にしたことです。このマーケティング戦略の変更により、クライアントは既存の流通経路を残しながら、新たな流通経路のチャンスを掴むために保険会社と対話することができました。新しいマーケティング戦略を活用するために、クライアントは販売に対する全体的なアプローチを変え、営業担当者が判断できる幅を増やしたり保険会社との長期的な関係を確保するための内部インフラストラクチャを構築したりする必要がありました。
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